バーや居酒屋などの深夜酒類提供飲食店、キャバクラやホストクラブなどの社交飲食店では、従業員名簿の作成が義務付けられます。
「従業員名簿くらい、書かなくてもたいしたことないでしょ?」と思うかもしれませんが、そんなに桜田門は甘くはありません。
多くの場合、警察署の見回りで最初に確認されるのはこの従業員名簿です。
立ち入りがあるときに、かならず「従業員名簿を見せてください」といわれるはずです。
ここで従業員名簿が作成されていなかったり、あるいは間違いが多かったり不備があるとします。
すると警察署の担当者はここで法律を守っているかどうかを判断してきます。
逆に従業員名簿がしっかり作成されていれば信頼をされ、結果として警察署とよい関係が築けることもあります。
すでにこれらのお店を開業している、あるいはこれから開業したいという方も、ぜひご参考下さい。
なお、実際の従業員名簿はリンクを張っておきますので、そちらからフリーでダウンロードして使ってくださって大丈夫です。
風営法の従業員名簿とは?
警察署が必ず確認する重要事項
まずは従業員名簿をそもそも知らないという方も多いと思いますので、従業員名簿の全体像を知りましょう。
従業員名簿は風営法に定められたもので、作成をしてお店に保存しておかないといけません。
では、どんなお店が作成しなければならないのでしょうか?
バーや居酒屋、スナックなどは深夜酒類提供飲食店という手続きをすることが多いです。
また、キャバクラやホストクラブなども風俗営業許可を取得して営業します。
これらのお店は作成の義務があります。
でも、風営法はそれだけじゃないですよね。
パチンコ店もマージャン店も、アミューズメントカジノも、それから性風俗店もその範囲です。
これらのお店も風営法の対象ですので、作成する義務がありますよということです。
なお、実際には業務ごとに記載内容に若干の違いがあるのですが、それは省いて解説しています。
通常はここで解説する書式で問題ないとお考え下さい。
従業員名簿はざっくりといえば、これらの記載事項があります。
(1) 労働者の氏名
(2) 生年月日
(3) 性別
(4) 住所
(5) 従事する業務の種類
(6) 雇入れの年月日
(7) 退職の年月日及びその事由(解雇の場合はその理由)
これらを記載します。
そして
①記載した従業員名簿
②本籍付きの住民票
③顔写真付きの身分証明書
をホチキスなどでとめて保存します。
なぜこんな面倒くさいことしないといけないの?
おそらく多くの人は
「なんでこんな面倒くさいことをしないといけないんだ」
と思うかもしれません。
ただでさえ忙しいのに仕事を増やすなと思いますよね?
ですがこれはお店の保護のためにも重要なので必ず押さえてください。
風営法に定められたお店は働ける人に規制があります。働ける人と働けない人がいるということです。
具体的には年齢と外国人の就労資格ですよね。
これらをお店側が把握できていないと、最悪な場合働けない人を雇ってしまうリスクがあります。
これを防ぐためにも従業員名簿は必要なんですね。
ここはお店側としても適正な営業をするために必要なことなんだと、最初から受け入れるほうがいいと思います。
履歴書とは違う

では、従業員名簿とはどのようなものなのか?まずは履歴書とは違うということをしっかり押さえましょう。
よく履歴書を従業員名簿と勘違いして保存しているお店もあるかもしれません。
しかし、履歴書は従業員が面接のために作るものであるのに対して、従業員名簿は採用後にお店が作成するものです。
ここが決定的に違いますので、しっかり押さえておきましょう。
また、これは言いづらい部分もありますが、ナイトビジネスに勤務する方の中にはできれば身分を隠したいという方もいらっしゃいます。
ただし完全に身分を隠したまま就労させれば、お店側に本来勤務できない人を雇うリスクが生じてしまいます。
ここはお店側がしっかりして、従業員任せにならないようにしましょう。
従業員名簿の書き方
では、具体的に従業員名簿を見てみましょう。
まずはこのように氏名、生年月日、国籍、地域、住所を記載します。
当たり前ですが普段源氏名で呼び合っていてもここは本名を記載することになります。
ここは住民票と一致するようにするのが無難です。
また、必ずこの情報をいつ確認したのかを記載します。
しっかりお店側が確認しましたよということを記録します。
わかりづらいのが従事する業務の内容ですよね。
ここは接客係とか店長、調理係などでいいのですが、より詳しく書いたほうがいいこともあります。
キャストさんであれば
お客の注文を受けて食事やお酒などをお客のテーブルやカウンターに提供する。
くらいの記載で大丈夫です。
ただし警察署の担当者によってはもっと具体的に書いてほしいと指導されることもあります。
この場合は、例えばキャバクラのキャストさんであれば
継続してお酌をし、談笑する。
など記載をすれば問題ありません。
この辺りは業務ごとに簡単に記載すれば大丈夫です。
添付書類は?
従業員名簿は、ただ書いただけではなくて、それを裏付ける資料の添付が求められています。
住民票やパスポート、住民票記載事項証明書などがあります。
これ、いろいろあるのですが結論から言えば本籍つきの住民票が一番早いです。
というのも日本人かどうかを確認するのは本籍を確認しないとわかりません。
外国人であれば本籍は記載されませんので、ここで判断するというものです。
また、住民票記載事項証明書もいいのですが、これを本人が役所に行って取得するのは結構面倒ですし、説明も難しいです。
それであれば
「本籍付きの住民票を取ってきてください」
と説明できる住民票のほうが実務的にはいいかもしれません。
なお、以前は本籍の確認は義務だったのですが、本籍の確認までを義務化させてしまうと場合によっては差別の助長にもつながるということで現在は記載事項にはなっていません。
顔写真付きの身分証明書のコピー
従業員名簿、本籍付きの住民票とともに必要なのが、顔写真付きの身分証明書のコピーです。
これは、例えば運転免許証やパスポートが最適ですが、ない場合は何とか探して見つけ出すしかありません。
なぜ顔写真付きの身分証明書が必要なのか?すり替え就労を防ぐ目的です。
例えばAさんは17歳なのですが、時給の高いキャバクラでアルバイトをしたいと思っているとします。
この場合に顔写真付きの身分証明書がないと最悪な場合、お姉さんの住民票で誤魔化される可能性もあるということになってしまいます。
こうなるとお店側が被害者とも言えなくはないですが、これを防ぐ目的で添付が必要になるということなのです。
誰が記載の対象なの?
では、ここまで聞いて実際に従業員名簿を作成しようとなりました。
では、従業員と一口に言ってもどこまでがその範囲なのか、わからないですよね。
これはキャストさんや内勤さん、店長さんなどのわかりやすい従業員は、もちろん対象です。
厳しいのがたとえ一日だけのアルバイトでも作成の義務はありますし、無報酬のお手伝いでも作成の義務があります。
踊る法のクラブであればミュージシャンにも作成の義務がありますので、ここは手堅く考えているほうが安全です。
退職後に3年の保存義務
従業員名簿で気を付けたいのが退職後に3年間の保存義務があるということです。
ナイトビジネスに勤務する方ですとなるべき履歴は残したくないという人も多いです。
そのため退職時に従業員名簿を返してくれと言われることもあるかもしれません。
しかしそこで返してしまいますと法律違反になってしまいます。
ただし退職する従業員の気持ちも大事なので、この場合は雇用するときに必ず説明しましょう。
そして最初から返せるものではないんだと理解を得たうえで雇用するのがベストといえます。
取り扱いは慎重に
では、ここまでで従業員名簿とはどういうものなんだ、またどのように作成するのかを見てみました。
最後になりますが最も重要なことは、取り扱いは慎重にしましょうということです。
なんだ、そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれません。
しかし案外雑に扱っているところも多いのが現状です。
従業員名簿には本人のプライバシーが記載されていて、隠しようのない事実が書かれています。
ナイトビジネスの場合、普段の自分とは全く違う自分を演じていることも少なくありません。
できれば身分を隠して勤務したいと思っている人だっているはずです。
そのような場合に従業員名簿は、見られたら恥ずかしいものかもしれないし、中には本当に見られたくないものである可能性も高いです。
お店が従業員名簿の扱いに慎重であれば、かならずその姿勢は従業員に伝わります。
逆に雑に扱ってしまうと、このお店は従業員のプライバシーの大切さをわかっていないと信頼されなくなってしまいます。
お店にとって従業員からの信頼は何よりも大事なはずですので、ここでしっかりと押さえておきましょう。